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資本市場との対話

激変する事業環境と当社の方向性をテーマに、株式会社いちよし経済研究所の吉田アナリストをお招きし、取締役の粟野、社外取締役の菅野との座談会を実施しました。 (2023年7月実施)

資本市場との対話を中長期視点の成長投資に活かす

資本市場の環境変化を受けたコミュニケーションのあるべき姿

吉田
「資本コストや資本収益性についての意識を高めてほしい」といった資本市場の声もあり、最近、企業価値向上に向けた投資家アプローチについての企業からの相談が増えています。実際に日経平均株価もバブル以降の高値を更新する状況にあり、投資家の間では日本企業に対する変化への期待が醸成されています。
また、相続などを機に投資を始める個人投資家も増加傾向にあり、インターネットの掲示板など、個人の意見を発信する媒体も増えています。このように機関投資家だけでなく、個人投資家の発言力が従来以上に強まっており、企業IRの重要性はより一層高まると言えます。そうした環境下で、これからの情報発信について、貴社はどのような方針をおもちでしょうか。
粟野
当社株主様の構成比率は個人株主が最も高く、高齢層も多いため、当社商品のユーザー同様に若年層をはじめとした世代別のアプローチの必要性を強く感じています。また、個人の情報発信の影響力の高まりは当社としても強く意識しています。幅広い世代の投資家の皆様に向けて、ホームページを軸に決算説明動画や統合報告書など見やすい情報発信に注力しています。
吉田
情報発信においては新商品などの商品情報だけでなく、投資家に対するメッセージも重要です。中長期目線の投資家層も増えており、これからの市場環境の変化に対し、各企業の強みをどのように活かしていくのか、例えば、自社の強み、弱み、機会、脅威を明確化することで企業が今後の外部環境変化の影響をどのように捉え、どのような対策を行っているという具体的なメッセ―ジがこれからは必要と言えますね。
粟野
機関投資家の皆様は直接的な株価の変動要素を意識しているとは思いますが、個人投資家の皆様は株主優待や配当に対して関心があるでしょうし、安定的に成長するのかが気になるポイントではないかと認識しています。
菅野
個人に向けたアプローチとしては、当社は消費財メーカーなので、個人投資家はお客様となります。投資家の皆様の声は社会全体の声として捉えることもできるため、そうした社会の声を経営に活かしていくことが重要であると感じています。
吉田
PBRの1倍割れという点に関しては、自社株買いや増配などの株価対策を行う企業も散見されますが、成長投資に対する考え方を示す方が、今後の成長期待をより生みだすきっかけになり、PBR向上につながるのではないでしょうか。
菅野
衣食住に関わる食品業界は人間が生きていくために不可欠なものであり、その特徴から企業価値の急激な変動は考えにくいですが、社会に必要な企業と認識されることで、長期的には堅実に企業価値を高められると感じています。
粟野
当社の場合はPBR1倍前後で推移していますが、継続的に1倍を上回るような努力が必要です。自社株買いなどテクニカルな対応では長続きはしないので、本業の成長を見せて実績を残していくことで、投資家の皆様に期待・信頼してもらえる流れを作りたいと思っています。

食品業界の環境変化と個食市場の可能性

吉田
食品業界の需要動向に目を向けると、少子高齢化などで将来的な成長が描きにくい状況にあると思います。その中で企業価値向上に向けての対策をどう考えていますか。
粟野
少子高齢化や人口減少が顕著になってきますので、国内で成長していくことは容易ではないと認識しています。また、お客様の好みが細分化され、ワンパターンの価値提供では売れない状況であり、少子高齢化やニーズの多様化にどう寄り添っていくか、いかに新たな価値を提供できるかが重要なポイントと認識しています。
菅野
少子高齢化よりも人口減少の影響が大きいと感じています。基本的には胃袋消費となるので人口が減ることは直接市場の縮小につながるリスクとなります。
吉田
新価値創造といえば、貴社ではポーション調味料が近年のヒット商品ですよね。ポーション調味料では顧客層、新領域を含めた今後の市場成長余地をどのようにお考えですか。
粟野
ポーション調味料はうまくニーズにマッチした商品であり、継続して成長している商品です。さらなる商品展開に備えて津山工場に生産設備の導入を進めており、ポーション調味料については、まだまだ伸ばせる余地があると感じています。当社独自のノウハウが凝縮した商品なので、新しいアイテムを増やすことで、当社の存在感をさらに高めていければと思っています。

次期中期経営計画における投資方針について

吉田
現在、中期経営計画「Unique 2023」の最終フェーズなので、次期中期経営計画を策定中だと推察します。次期中期経営計画の位置づけ、投資方針をどのように定義しているか教えていただけますか。
粟野
今まで議論してきた新市場、新価値創造においてはいずれも人材がキー要素になります。海外の新しい市場を開拓していくにあたって、現地での推進者が当然必要であり、設備投資したらそれで終わりとは思っていません。いかに人材に対して投資と育成を進めるかという点は次期中期経営計画において大きなポイントとなります。
また、資本の有効活用のという観点からも、事業成長に必要な投資は積極的に実行していきたい認識であり、投資機会は常に探っていきたいと思っています。
菅野
ここ数年の企業集団を見ていくと、M&Aにより子会社の数が大きく増えてきている状況にあり、従来は物流や広告宣伝など、サプライチェーン機能を分解した構造になっていましたが、取引先も関係会社に含めるなど構造が変わってきています。この点で、グループ経営の在り方、そこに向けた人材配置・育成は重要なポイントになるかと思います。また、強みを分析していくと商品力や資金力などいくつかありますが、最終的には人材に尽きると考えています。
吉田
確かに人材に対する投資・育成は重要なポイントですね。有価証券報告書における開示義務化など、人的資本については投資家を含む多くのステークホルダーが注目しています。海外への投資と併せて今度の貴社の動向に大いに期待しています。

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