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サステナビリティ対談

2022年度に「サステナビリティ委員会」を新設し、サステナビリティ経営に向けた取り組みを進めているエバラ食品。コロナ禍、物価高騰、人手不足など、社会全体が大きな変化にさらされている今、世界そして未来の食に向けてどのようにアプローチをするべきか、代表取締役の森村と社外取締役の赤堀が意見交換をしました。(2023年7月実施)

食のパーソナライズ化に向け「競争・共生・協業」により楽しい食シーン・食体験を提供

クラウドファンディングを活用した新たなモノづくりアプローチ

赤堀
近年、世帯人数の減少や働き方改革などもあってライフスタイルの多様化が進んでいますが、食生活もますます変化している印象を受けますね。いろいろと制約のあったコロナ禍を機にあらためて食の大切さに気づいた人もいたでしょうし、食に興味がなかった人が料理に興味を持つきっかけになったかもしれません。
森村
そうですね。ただ、赤堀取締役がいつもおっしゃっているとおり、食に対する意識の二極化はさらに進行し、食への関心が高い層では今後ますます嗜好が細分化していくのでしょうね。
当社としても、パーソナライズ化への対応が必須と考えており、お客様との距離を縮めるためにビックデータやAI(人工知能)といったテクノロジー、EC等のチャネルを積極的に活用していきたいと考えています。また、そのような環境下ではこれまで当社が得意としてきた生産効率の良い大量生産型のモノづくりでは通用しません。多品種少量生産が可能な生産体制を構築し、効率化を図り収益を維持、向上させる必要があります。同時に、開発手法や販売ルートにおいても新たな方法を確立しなくてはなりません。2023年7月に新たに立ちあげたブランド「AWESOMEET(オーサミート)」では、当社として初めて応援購入サービス(クラウドファンディング)「Makuake」を活用しました。
赤堀
「AWESOMEET」の和牛専用調味料を私も試食でいただきましたが、味は抜群でした。ただ、想定の価格帯が高いので確かに既存のルートでの販売は難しいでしょうね。
森村
想定している市場規模があまり大きくなかったり、ニーズがどれほどあるか未知数な商品は、リスクを考えるとなかなか挑戦しづらいものです。しかし、クラウドファンディングのようなサービスを使うことでリスクを軽減でき、それだけでなく共感者・応援者の声を集めることで知見が得られ、企業としても挑戦の幅が広がります。食における嗜好の細分化は当社のニッチ&トップ戦略を活用する機会だと捉えています。今後もさまざまな新しいチャレンジを続け、ワクワクするような素晴らしい食シーン・食体験を世の中に生み出していきたいと考えています。

「ご当地感」と「健康感」で既存事業の需要を喚起

赤堀
直近の事業について、原材料や輸送費、人件費の高騰もあり各社で食品の値上げが続いています。家計への影響も大きいので、節約意識が高まることで消費が伸び悩むのではないでしょうか。
森村
厳しい状況が続いていると言わざるを得ません。そうした中でも国内市場において需要を喚起するためのキーワードとして「ご当地感」と「健康感」を挙げています。その土地ごとに愛されている味や根付いている食習慣に対して丁寧に対応していくこと。またメーカーとしてはやはり健康感のある商品を発売する必要があると考えており、そうした取り組みが需要喚起につながると考えています。
赤堀
「健康感のある商品」って何でしょう。普段から料理を教えている立場からすれば、たとえ「特定保健用食品(トクホ)」や「機能性表示食品」でなくても、エバラ食品のように「食品を扱っている企業はそれだけで十分健康に寄与している」と思うのですが。森村社長はなぜ「健康感のある商品」として形にすべきと考えるのですか。
森村
当社としても「トクホ」や「機能性表示食品」を発売しようと考えているわけではありませんが、旗艦商品は生み出していく必要があると考えます。なぜなら、一般の生活者からすれば、健康を軸とした商品があることが、その企業が健康に取り組んでいるという判断材料になるからです。

食に制約がある方にも選択肢を増やし、調味料で「健康」への橋渡しを

赤堀
確かにそういった商品を生み出すことは生活者に向けたわかりやすさとしては良いかもしれませんね。
例えばどんなカテゴリーで健康関連商品を生み出したいと考えていますか。これからの戦略にもつながるので言えることも限られると思いますが。既存カテゴリーですか。それとも新たなカテゴリーで挑戦するつもりですか。
森村
詳しいことはあまり言えませんが(笑)まずは既存カテゴリーで挑戦するのが良いと考えています。比較的「健康」との親和性が高いと思われる野菜まわり調味料群や鍋物調味料群で発売できたらと。実は、一部は試作の段階にまで形になっているのですが、まだ越えなくてはならないハードルがいくつもあって。世に出すなら単に機能として健康感があるだけでなく、プラスアルファの付加価値がある商品を目指したいですしね。
これとは別に、食品メーカーとしてはアレルゲンフリーの調味料にも着手していくべきだと考えています。
赤堀
それはいいですね。つい先日も仕事でドラマの撮影現場に行ったのですが、出演されている俳優さんが複数のアレルギーをおもちだったので、とても気を遣いながら撮影用の料理を作りました。アレルゲンフリー食品は人命に関わる重要なものですから、エバラ食品が健康関連商品を出すならば、当然そうした商品も取り揃えるべきだと思います。
森村
食の細分化への対応の一つとして考えていましたが、確かにアレルゲンフリー食品への対応は最優先事項とすべきかもしれませんね。食品メーカーとして、食に制約がある人にも食の選択肢を広げることで、あらためて食の楽しさを実感できる機会を提供できればと思います。
コロナ禍を機に生活者の健康意識はますます高まっており、食品メーカーには義務といってもよいほど「健康」への取り組みが求められています。赤堀取締役の専門分野ではありますが、本来「食」とはバランスが最も重要で、昔ながらの一汁三菜のようなバランスの取れた食習慣を身に着けることが大切です。食品メーカーとしてはそうしたバランスの良い食習慣を意識づける食育活動などの啓発が大切だと思ってはいますが、生活者からすると、健康食品を出していない企業からの情報発信は説得力がないものとして捉えられてしまうと懸念しています。
生活者からすれば、現在の当社は健康に対する取り組みが不足している企業だと思われているでしょう。やや遠回りなのかもしれませんが、健康感のある旗艦商品を生み出すことで、バランスのよい食習慣の訴求など、当社の提供価値の幅を広げることができると考えています。
赤堀
確かにバランスはとても大切です。一方で現代の生活者にとっては昔ながらの1日3食、一汁三菜という食生活は精神的に負担になるとも思います。栄養学は常に進化していますし、単に「昔ながらの正しい食習慣」を伝えるのではなく、正しい食習慣の定義も時代に合わせて変えていく必要があると感じます。「その時代にあった健康とは何か」を、どうキャッチし、対応し、発信していくのかがポイントですね。
森村
おっしゃるとおり時代の流れを読むことはとても重要ですよね。アジアを中心とした諸外国では今後GDPの高まりとともにもっと肉を食べるようになるでしょうし、反面、いわゆる「買い負け」などの理由により日本では今ほど手軽に肉や魚を食べられなくなる可能性があります。また、動物性たんぱく質から植物性たんぱく質へのシフトは世界の潮流ですので、今の段階から手を打っていかなければなりません。実際、当社としてどういった価値を生み出せるか、研究を進めている段階です。肉・魚・植物性のプラントベースフードなど、対象となる素材はその時代や地域によって変わりますが、いつの時代も食事をよりおいしく健康なものにするために、健康への「橋渡し」「つなぎ役」として当社の調味料がお役に立てる存在になりたいと考えています。

「つなぐ」ことでエバラ流の楽しさをお届けしたい

赤堀
調味料ができる領域はまだまだたくさんあると感じます。「つなぎ役」といえば、森村社長はいろいろな企業との協業にも力を入れていますよね。他社との協業の目的をどのように捉えているのでしょうか。
森村
自社だけでできることには当然限りがありますから、新たな未来を切り開くためには「競争・共生・協業」が必要不可欠だと考えています。健康感のある旗艦商品を早期に上市し、流通や食品メーカーだけでなく、消費財や家電・住宅メーカーなど業界を超えたコラボレーションを実施することで新たな市場を創造する機会にしていければと考えています。
赤堀
社外取締役の立場から言わせていただくなら、モノづくりも大切ですが、「その調味料からどんな食シーンが広がるか」と想像を膨らませながら商品をつくり、お客様に販売して欲しいなと常に感じています。ちょっとした意識の仕方なのですが、自分たちがモノをつくって販売しているだけじゃないことをエバラ食品の従業員の皆さんには理解してほしいですね。そうしたことを意識するだけで、モノづくりや商品情報の伝え方も変わってくると思います。
森村
私自身も「商品」ではなく、あくまで「食シーン・食体験」を提供していることを忘れないようにしたいと思います。それと、たとえ大勢で食べるときも、1人で食べるときも「楽しむ」ことが大切ですよね。将来的には手軽に楽しめる栄養食のようなものを作って、今まではあまり接点のなかった方々にもエバラ流の食の楽しさをお届けしたいと考えています。そのためにも、自由な発想で楽しくスピード感を持って商品開発ができる体制をしっかりと整備し、新たな事業を切り開いていきたいです。

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