血管の専門医が初めて明かす減塩の秘策!
置き換えるだけ!この秋から肉食で減塩生活
国内の高血圧患者数は、約4300万人※1と推計されています。健康寿命を延ばし、いつまでも元気でいるためには「血管の健康」が重要ですが、気温が下がる秋冬は、血管が縮むことで血圧が高くなり、血管に関係する疾患が増える時季でもあります。今回は、加齢とともに増加する高血圧を予防・解消する方法について、血管の専門医である医学博士の池谷敏郎先生にお話をうかがいました。
※1:NIPPON DATA2010および2010年国勢調査人口より推計
血管の健康には「たんぱく質」と「減塩」が基本
筋肉を作る役割がよく知られているたんぱく質ですが、血管の細胞を作るための重要な原料でもあります。一方、塩分はとりすぎると高血圧を悪化させたり、動脈硬化を進める原因となります。加齢とともに硬くもろくなっていく血管を、若々しく健康に保つためにも『たんぱく質』摂取と『減塩』に気を配ることが大切です。
近年、元気な高齢者は肉をよく食べているという研究結果が発表され、メディアもシニアの体づくりに大切な栄養素としてたんぱく質を取り上げるなど、シニアの間でたんぱく質を積極的にとる意識が高まっています。たんぱく質源としては魚や肉、大豆、卵などがありますが、魚中心の食生活を送られている方も少なくありません。ただし、同時に意識してほしいのが血管にダメージを与える塩分です。魚料理は、食べるときにしょうゆをたくさんかけたり、てりやきやみそ煮にするなど、味付けが濃くなる傾向にあるので注意が必要です。そこで、提案したいのが普段の魚料理を肉料理に置き換えて、たんぱく質をとりながら減塩する方法です。
塩分をとりすぎると血中のナトリウム濃度が上がり、それを抑えようと水分をとるため血液量が増え血圧が上昇します。さらに、血中で増えたナトリウムは、血管壁の内側にある血管内皮細胞を傷つけることがわかっており、血圧上昇に関わらず動脈硬化を進める可能性があると考えられています。
置き換えるだけ!肉食で減塩生活!?
60歳以上の1日のたんぱく質摂取推奨量は、男性で60グラム、女性で50グラムとされています。これはなんと18歳の推奨量と同じ量なのです。また、1日の食塩摂取量の目標値は男性で8.0グラム未満、女性で7.0グラム未満とされています※2。
1日3食と考えると、1食あたりのたんぱく質摂取推奨量はおよそ20グラム。このたんぱく質量をとる場合の塩分量を、魚料理と肉料理で比較してみたところ、鮭の塩焼きは約1.6グラム、ポークソテーは約0.8グラムでした※3。減塩調味料にありがちな物足りなさをがまんしなくても、メイン料理を鮭の塩焼きからポークソテーに置き換えるだけで約0.8グラムも減塩できることになり『肉料理で減塩』できるのです。
※2:日本人の食事摂取基準(2015年版)
※3:一般的な魚メニューとお肉メニューの塩分量:あすけん調べ
冷奴や目玉焼きも・・・実は塩分過多の原因に!?
豆腐や卵などのたんぱく質をとる際も、実は塩分を多くとってしまうことがあります。冷奴や目玉焼きを食べるときに、しょうゆ差しから量を気にせずかけていませんか。実は濃口しょうゆ大さじ一杯の塩分量は約2.6gもあるのです※4。味蕾(みらい)という味を感じる器官が加齢とともに減少していくことも、塩分過剰摂取の一因だと考えられています。
※4:日本食品標準成分表2015年版(七訂)
焼き肉のたれで、おいしく手軽に減塩!
基礎調味料を使って自分で味付けをすると、どうしても濃くなってしまいがちな人におすすめなのが、市販の焼き肉のたれの活用です。特にフルーツがたくさん使われている市販の焼き肉のたれなら、しょうゆベースのものよりも塩分量が低いうえ、果実のうまみや香味野菜のコクにより低塩なのに満足できる味わいが手軽に出せます。高血圧の方や食事の塩分量を気にしている方には、市販の焼き肉のたれを上手に使って、おいしく賢い減塩生活を送ってもらいたいですね。
出典:100グラムあたりの塩分量(日本食品標準成分表2015年版(七訂))
大さじ1の重量(調理のためのベーシックデータ第5版)
池谷 敏郎(いけたに としろう)先生
医学博士・池谷医院院長。東京医科大学医学部卒。東京医科大学循環器内科客員教授、日本循環器学会循環器専門医。
ベストセラー『人は血管から老化する』『老けない血管になる腸内フローラの育て方』など著書多数。