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大根おろしが感動ふわっふわ! おろしニスト・飯田結太が教える おろし金の選び方

大根おろしが感動ふわっふわ! おろしニスト・飯田結太が教える おろし金の選び方

おろし金といえば、さまざまな野菜のおろしを作る料理道具。フライパンや包丁に比べると少々地味で、使ったことはあっても「正直あまり注目していなかった」という人のほうが多いのではないでしょうか。
このおろし金に魅了され、"おろしニスト"としてメディアで活躍するまでになったのが、飯田屋六代目の飯田結太さん。飯田さんいわく、おろし金には一つひとつ個性があり、できるおろしも千差万別なんだとか。200種類を超えるおろし金を使い比べてきたという飯田さんに、自分史上最高のおろし金を見つける方法を聞いてきました。

おろしの味は刃の「形」と「向き」で決まる

おろしの味は刃の「形」と「向き」で決まる

こんにちは、飯田結太です。料理道具のなかでは、わき役的な存在のおろし金。でも僕としては、一番こだわりのある道具と言っても過言ではありません。興味を持ったきっかけは、とある料理人の方からのご依頼でした。「やわらかい大根おろしを作れるおろし金がほしい」とおっしゃるんです。
この人は何を言ってるんだ、と思いました。当時の僕は、世の中にはいろいろなおろし金があることも、それによっておろしの味や食感が変わることも、まったく知らなかったからです。
店頭を見ると、大中小とサイズ違いのおろし金が3つ並んでいるだけ。これではお客様の要望には添えないと、全国から数えきれないほどのおろし金を取り寄せ、日夜試し続けました。するとビックリ。同じ野菜をおろしたとは思えないくらい、味わいに差が出たんです。
それと同時に、おろし金の見た目の個性にも気づきはじめました。刃が鋭角なものがあれは、鈍角なものもある。穴が四角くて小さいものがあれば、丸くて大きいものもある。おろし金がまっすぐのものがあれば、湾曲しているものもある――。大げさではなく、ひとつとして同じおろし金はありませんでした。
“おろしニスト”としては、レモンやにんじん、チーズやチョコレートという変わり種のおろしも本当においしくて、オススメしたいんです。でも一番身近なのはやっぱり、大根おろしじゃありませんか? ここではおろし金の種類ごとに変わる、大根おろしの味わいについてご紹介しましょう。差が出るポイントは「食感」と「甘み」の2つです。

僕は大根おろしを食感によって「ふわふわ」「ふわシャキ」「シャキふわ」「シャキシャキ」「ジャキジャキ」の5タイプに分けています。刃が鋭角で上を向いている(写真左)ほど、大根の繊維がしっかり切れて、甘くてふわふわのおろしに。刃が鈍角で斜めを向いている(写真右)と、大根の食感が残った、辛みのあるシャキっとしたおろしになるんです。厚焼き玉子に添えるなら「ふわふわ」、焼き魚に添えるなら「シャキシャキ」が好きですね。でも、気分によっては「今日はあえてジャキジャキにしてみようかな」と思うこともあります。どれが正解というのは、特にナシ。料理や好みによって使い分けて、おろしの世界を堪能してみてほしいと思います。
いいおろし金の「5つの条件」

いいおろし金の「5つの条件」

僕は実は、みずからおろし金を監修したりもしているんです。そのときに研究と試行錯誤の末に発見した「いいおろし金の条件」を5つ、こっそりお教えしましょう。これからおろし金を購入する人は、ぜひチェックしてみてください。

【1】アーチ型をしている
「おろし金を使うと疲れるし、腕が痛くなる」とお悩みではありませんか? 実はこのお悩み、正しいおろし金を選べばスッキリ解決するんです。ポイントは、おろし金が「凸のアーチ型」になっているかどうか。これによって野菜とおろし金との接地面が少なくなり、腕への負担が軽減します。「パワーには自信があるから、とにかく早くおろしたい」という人には「凹のアーチ型」がオススメ。まっすぐの場合より、野菜とおろし金の接地面が多くなるんです。腕への負担は多少増すものの、1回のストロークでできるおろしの量が格段にアップしますよ。

【2】金属でできている
これはおろし金に限らずなのですが、料理道具の素材は「硬すぎず、軟らかすぎず」が鉄則です。セラミックなどの硬すぎる素材では刃先がポキッと折れてしまいますし、かといってプラスチックなどの柔らかすぎる素材では、刃が摩耗してしまいます。一番いいのは、やはりステンレスなどの金属製ですね。ただし、いくら金属製のおろし金とはいえ、ほかのカトラリーと一緒に引き出しに入れっぱなしにしてしまうと、ぶつかり合って刃こぼれの原因になります。刃が硬いものに触れないようカバーをする、専用の場所に収納するなど、注意してくださいね。

【3】穴が大きい
おろし金の穴におろしが詰まって困ったこと、ありませんか? それはおろし金の穴が小さすぎるから。最低でも直径5ミリくらいのものを選びましょう。穴が大きければ大きいほど、おろしはスムースに下に落ちていってくれます。洗いものも簡単で助かりますよ。

【4】ある程度の長さがある
最近では薬味用の小型おろし金も出ていますが、普段使いにはある程度の長さがあるものがオススメです。なぜなら、1回のストロークでより多くのおろしを作れるからです。できれば30センチくらいの長さのある、大型のものを選びましょう。

【5】安定感がある
不安定なおろし金を使うと疲れるだけでなく、ケガの原因にもなりかねません。台形のような末広がりの形をしている、本体よりも少し大きな土台がついているなど、テーブルに置いたときに安定感があるものを選びましょう。取っ手がついていると反対側の手で支えられて、より安心です。

おろしを作るときのポイントは、力を入れすぎないこと。力を入れたほうが早くおろせそうな気がしますが、実際は逆です。肩の力を抜いて何度もストロークを繰り返したほうが効率がよく、結果的にスピーディーにおろしを作れるのです。生で味わう場合、おろしを作るベストタイミングは「食べる直前」。作って3~5分経つと、独特の臭みが出てくることがあるからです。

大根おろしを作るときは、皮のむき方にも気を配りましょう。大根の辛み成分は皮付近に含まれているため、甘い大根おろしにしたいなら、皮を厚めにむいてください。また、この辛み成分は熱に弱いと言われています。辛みが苦手な人は弱火にかけたり、電子レンジで加熱(500Wなら50秒程度)するのもいいですね。
ふわふわの大根おろしで作る「ナスのみぞれ煮」

ふわふわの大根おろしで作る「ナスのみぞれ煮」

おいしいおろしを作れるようになったら、ぜひ料理にも活用してみましょう。夏から秋にかけて旬をむかえる野菜といえば、ナス。とろけるようなナスとふわっふわの大根おろしのハーモニーを、目いっぱい楽しめますよ。

ナスのふわふわみぞれ煮
調理時間:15分
<材料>(4人分)
・ナス(中)……4個
・サラダ油……大さじ3
・大根……1/4本
・プチッと鍋 寄せ鍋……2個
・水……300ml
・小ネギ……適宜

<作り方>
(1)ナスはヘタを取って縦半分に切る。味が染みやすいよう、皮目のほうに数か所切り込みを入れる。
(2)ナスをボウルに入れ、サラダ油を入れて油を吸わせる。
(3)フライパンを中火にかけ、皮目を下にしてナスを炒める。皮目の色が変わってきたら菜箸で裏返し、少し焦げ目がつくまで待つ。
(4)水と「プチッと鍋 寄せ鍋」を加え、2~3分煮る。ナスにつゆが行きわたったら火を止めて、ナスだけを出して皿に盛りつける。
(5)大根をおろして、つゆの入ったフライパンに入れる。
(6)弱火で50秒ほど煮たら火を止めて、ナスに回しかける。小口切りにした小ネギを散らして出来あがり。
調理のポイント

調理のポイント

・鰹と昆布のだしにほんのりとショウガがきいた「プチッと鍋 寄せ鍋」は、大根おろしとの相性抜群。計量しなくてもいいから、味つけの失敗もなし。
・大根は使う直前におろす。こうすることで辛みが出にくく、ナスに合う甘めの味わいに。
・大根おろしは火にかけすぎると、硬くなってしまう。必ず弱火で、時間も短めに。
・ナスは炒める前に油を吸わせておくと、余分な油を使わずにすんでヘルシーに。

飯田結太(いいだ・ゆうた):大正元年創業の料理道具屋の老舗、飯田屋の6代目。自ら天職と語るほど料理道具をこよなく愛する。テレビ・雑誌・漫画など多数のメディアで最新の料理道具や長く使える手入れ法を紹介。特にフライパンと便利グッズに関しては語り始めると止まらなくなる。トレードマークは蝶ネクタイ。『マツコの知らない世界』ほか、メディア出演も多数。

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